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2025年02月20日
サステナビリティインタビュー
液体や気体、蒸気といった流体を計測する流量計は、生産現場になくてはならないものだ。ただ、流体を測るだけでは現場は回らない。生産拠点全体のプロセスの最適化を図り、生産性や品質を向上させるには、流量計をはじめとした各種センサ、センサ信号の受信器や発信器、流体の制御を行うバルブやポンプ、それら生産プロセスの機器を監視・制御する仕組みを含めたシステム全体の見直しが必要になる。
オーバルには、生産・製造の工程や拠点全体を見直し、提案から施工までワンストップで提供する「システムエンジニアリング」チームがいる。製造プロセス全体を最適化する俯瞰的な視野、無理・無駄・ムラをなくす設計思想、さらにはインシデントを削減し品質を向上させる品質管理のノウハウを駆使し、生産現場を底支えしている。
単なる計測にとどまらないオーバルのシステムソリューションとは何か。チームのキーパーソン2人に話を聞いた。
オーバルでは、流量計専業メーカーとして培った計測技術を活かし、顧客の要望に応じた最適なシステム製品を提供している。移動式の小型ユニットからプラント建設まで、システム製品の提供には60年以上の実績があるという。
「私たちが提供するのは、お客様のご要望や課題に応じたオーダーメイドのシステムソリューションです。流量計を中心としたさまざまな周辺機器を組み合わせ、装置・設備を作り上げています。課題の調査、分析からシステムの提案、導入まで、ワンストップでご提供できるのが特徴。建設業許可も取得しているため、設計はもちろん、施工、試運転・保守と、一貫した対応が可能です」
そう語るのは、システムエンジニアリング部部長の齋藤一道氏だ。石油エネルギー関連企業や食品メーカーをはじめ、多種多様な生産現場のニーズに合わせて、オリジナル仕様のシステムを提供しているという。
プロジェクトは長期間にわたることも珍しくない。システムの設計や製作に携わる石塚裕太郎氏は、「お客様と一緒にシステムを作り上げていくため、数カ月間現地に滞在することもよくあります」と言う。
「実際に現地でヒアリングをすると、お客様ご自身も気づいていなかった課題が見つかることもあります。初めは流量計だけのお問い合わせでも、お話を伺っていくうちに『真の問題解決や目的達成のためにはシステム自体の見直しが必要』と、システムの設計からのご依頼になるケースも多いです」
少子高齢化や働き方の多様化が進む中、労働力の減少がさまざまな場面で問題視されている。生産現場からも、人手不足や人材の高齢化に対応するため、工程を自動化・省人化したいという声が多く聞かれるという。
そのような課題に対応するシステムのひとつが、オーバルの出荷システムだ。高精度な流量計を中心とした定量制御技術(設定した仕込み量で生産プロセスを管理・制御する方法)により、容器への充填、ガソリンやLNG(液化天然ガス)などを運搬するローリー車や船舶への積込みまで、あらゆる液体の出荷を自動化。従来のようなオペレータによる作業が不要になり、出荷データは自動で記録される。省人化や効率化はもちろん、品質とトレーサビリティの向上にもつながるシステムだ。
また、ニュースなどで話題になった、グリーンアンモニア製造技術の実証プラントにも、オーバルの出荷システムが導入されている。グリーンアンモニアとは、再生可能エネルギー由来の水素(グリーン水素)から生成されるアンモニアのことだ。燃焼時はもちろん、製造時にもCO2が排出されないことから、脱炭素社会実現に向けた次世代の資源エネルギーとして期待されている。
「アンモニアは燃料としての利用のほか、水素を運ぶ“水素キャリア”としても大きな注目を集めています。ただし、従来のつくり方では製造時に多量のエネルギーがかかり、CO2も排出されてしまいます。このような課題を解決し、効率的・安定的なグリーンアンモニア製造技術を確立するには、正確な計測と制御が不可欠です。その一端をオーバルの高精度な流量計と共にシステムエンジニアリング技術が担っていることに、責任とやりがいを新たに感じています。」(齋藤)
生産工程におけるシステムソリューションは、省エネや安全性向上にも効果を発揮している。例えば、水や電力、ガスなどの使用状況や、設備の稼働状況をシステムで可視化する事が、無駄の発見・削減の一助になる。危険な場所での作業が自動化されれば、安心・安全な労働環境づくりにも役立つだろう。
「安全性を高めるソリューションの例としては、『LNG(液化天然ガス)タンク液密度測定装置』も挙げられます。この装置をLNGタンクに設置することで、精度の高い密度計測により内部の状況を監視・制御が可能となり、ロールオーバー現象(※1)による事故のリスクを未然に防げます」(齋藤)
(※1):密度が異なるLNGをタンクに受け入れると、2種類のLNGが十分に混合されずに層状化することがあり、その後、急激に層が消滅すると、大量のBOG(ボイルオフガス)が発生する可能性が知られている。 この現象をロールオーバーと言い、この現象が発生するとタンクの損傷など事故につながる危険性がある。
システムの提案にあたっては、流量計だけでなく、周辺機器についても精通していなければならない。システムエンジニアリング部で長年の経験がある齋藤氏も、「常に知識をアップデートしていく必要がある」と語る。
「お客様からは、ざっくりとしたイメージでのご相談をいただくことも少なくありません。お話の中から課題解決に向けた“シーズ(seeds)“を見つけ、“ニーズ(needs)”につなげていくのが私たちの役目。そのためにも、実際の現場を自分の目で見て、耳で聞き、問題の本質を判断できるように心がけています。同時に、生産拠点は、稼働を止められないことがほとんど。苦労も多いですが、その分、お客様からの信頼が大きなやりがいにつながります」(齋藤)
「オーバルは流量計メーカーですから『正確に測れる』ということは一番の強みであり、大前提だと考えています。大切なのは、プラスアルファの価値をどこまでご提供できるか。例えば、流量計やバルブ、ポンプといった機器ひとつをとっても、計測する流体や使用される環境などによって、それぞれ選定や設置の仕方が変わってきます。また、いくら精度が高くても、お客様にとって使いにくいシステムでは意味がありません。工場内の段差や温度など細かい部分にも気を配りながら、オーバルが培ってきたノウハウを最大限活かし、生産性や利便性の向上に貢献したいと思っています」(石塚)
大規模プラントでも先進的なラボ(実験室)でも、生産の現場は「流れの計測」なしには成り立たない。原材料が滞りなく正確に供給されること、排気や排出物が漏れなく適正に管理されることなど、インプットとアウトプットの流れの設計は、生産・製造ラインの重大テーマだ。また現在、持続可能な社会の実現を目指し、さまざまな分野で実証実験が展開されている。正確な計測がなければ、実証実験の結果を分析し、正しい結論に達することもできないだろう。そのような中、システムソリューションでどのような役割を担いたいと考えているのか、改めて2人に聞いた。
「持続可能な社会の実現に貢献するためには、私たちが持続可能な会社でなければなりません。流量計の精度やシステムの質を常に向上させること、校正を含めたメンテナンスに注力し続けること。そして、それを若い社員に引き継ぎ、社会に貢献していくことが重要だと考えています」(齋藤)
「そのためにも、オーバルの流量計をもっと多くの方々に知っていただきたいですね。オーバルは流量計メーカーとして豊富な実績がありますが、一般消費者をはじめとした個人の方への認知度はそれほど高くないのが実情です。自動車や家電、また食品や医薬品、日用品をはじめとした製品の安全性に、消費者からも厳しい目が注がれています。オーバルのシステムで生産された製品に対して、『オーバルが使われているなら安心』『きっと品質が高いのだろう』と思ってもらえるような存在を目指したいです」(石塚)
(ライターメモ)
液体、気体、蒸気などの流体を計測する流量計は、あらゆる産業を支える「マザーツール」といわれている。さらに、効率的な資源管理や無理・無駄・ムラの排除を実現するには、流量計単体にとどまらない生産プロセスの最適化が求められる。オーバルでは、流量計専業メーカーとしての実績に裏打ちされたオーダーメイドのシステムソリューションを提供。顧客との信頼関係を重視しながら、労働人口の減少や次世代エネルギーの活用といった社会課題の解決にも貢献している。