流量計とシステムソリューションのオーバル

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水マネジメントを後押しする
‐未計測の資源を可視化し、新たな価値を引き出す‐

2025年06月20日

サステナビリティインタビュー

地球の表面の3分の2は水で覆われているが、そのうち淡水が占める割合は約2.5%に過ぎない。さらに、その淡水の大部分は氷河や地下水などであり、人が利用しやすい淡水の量は、水全体のわずか0.01%程度だといわれている。気候変動や世界人口の急速な増加が続く現代、安全かつ平和的に水を確保することは、安全保障における重大なテーマとなっている。水の効率的な使用は企業にとっても非常に重要な課題だ。国内外を問わず、水の使用量削減や水資源の保全といった「水マネジメント」に注力する企業は増えている。水マネジメントの第一歩は、使用状況の可視化だ。しかし実際には、多くの施設では水の使用量を細分化してとらえきれず、環境負荷の低減やエネルギー消費抑制のスタートラインに立てていない。例えば、水の加熱や移送、排水処理にはエネルギーが必要である。したがって、水使用量の削減は、これらのエネルギー消費を抑制することにつながる。

このような課題の解決に役立つのが、オーバルが東京計器株式会社と共同開発した液体用電池駆動式クランプオン形超音波流量計「UC-1」だ。事業活動に欠かせない「水」を測る重要性や、UC-1を通して水マネジメントに貢献する考えを、開発に関わったキーパーソン2人に聞いた。

ユーティリティ流体である「水」を管理する難しさ

 

水や温水、蒸気、燃料油など、「ものづくりには直接関わらないが、製造工程や施設の稼働に不可欠な流体」のことを、ユーティリティ流体と呼ぶ。その中でも、最も身近な資源が水だ。工場やプラント、ビル、商業施設などでも、水なしでは運営が成り立たないだろう。一方で、気候変動や人口増加により、水資源の制約が世界的に深刻化している。SDGsでは、目標6『安全な水とトイレをすべての人に』が掲げられています。また、ESG投資の観点からも、水資源の有効活用と環境負荷低減を目指す『水マネジメント』に取り組む企業が増えてきました。

水マネジメントを進めるうえでの重要課題が、水資源の効率的な利用と排水の再利用による、環境負荷の低減とエネルギー消費の抑制だ。そして、環境負荷の低減やエネルギー消費抑制の第一歩となるのが、『使用状況の可視化』である。水をはじめとするユーティリティ流体が、いつ、どこで、どのくらい消費されているかを正しく把握できなければ、どこに無駄があるか、どうやって改善すればいいかもわからない。しかし、多くの企業では、水の使用量をきめ細かく可視化できていないのが現状だ。その要因について、研究開発部部長の鷲尾健二氏は次のように語る。

 

 

「水の流量を測るには流量計が必要ですが、多くの流量計は、設置にあたり配管工事を伴います。さらに、電源駆動の流量計であれば、電源設置工事やケーブルの敷設も必要になります。ものづくりやサービスの品質に直接関わらない、省エネを目的とした可視化だけのために、このようなコストや手間をかけられるか、と考えると、多くの企業が二の足を踏むのも無理はありません」(鷲尾)

 

その結果、水の流量を計測する流量計は、供給源である主管のみに設置され、枝分かれした配管への導入はなかなか広がっていない。これでは、全体の使用量はわかっても、水がどこでどの程度使われているかは把握できず、効果的な省エネ対策につなげるには不十分だ。どうにかして流量計導入のハードルを下げ、水マネジメントに貢献できないか――。その思いから、オーバルが東京計器株式会社と共同開発したのが、液体用電池駆動式クランプオン形超音波流量計「UC-1」だ。

 

流量計測の課題を解決する“完全工事レス”の流量計

 

UC-1の大きな特長は、“完全工事レス”で導入・運用ができることだ。配管の外側から取り付けるクランプオン形の流量計で、配管工事や電源工事、配線工事、取付工具が一切必要ない。

 

「UC-1は付属の手締めバンドを用いて設置するため、配管工事はもちろん、ドライバーなどの工具もいりません。また、内蔵電池により約10年間の連続稼働が可能なので、電源設備のない場所でも問題なく使用できます。配管の間に取り付ける流量計のような、メンテナンス時に流れを止めないためのバイパス配管も不要です。これまで費用や工事期間の面から流量計の導入が難しかった枝管も、UC-1ならコストを抑えつつ流量の可視化が可能になります」(鷲尾)

 

 

開発に際しては様々な企業にヒアリングを行い、ユーティリティ流量計測の課題やニーズに対応するため調整を重ねたという。「1機種で8口径の配管に対応できる汎用性の高さも、そのひとつです」と語るのは、技術部係長の菅家広大氏だ。

 

「UC-1は、小口径から大口径まで、国内で多く使われている8サイズの配管⼝径に対応しています。太さの異なる配管に取り付けてもしっかりと密着させられるように、東京計器株式会社様と協力しながら設計を工夫しました。幅広い口径に1機種で対応できるため、予備品の用意も最小限で済みます」(菅家)

 

 

「さらに、UC-1はセイコーインスツル株式会社様が提供する無線センサネットワーク『ミスター省エネ』に対応しており、無線による遠隔での流量管理が可能です。『ミスター省エネ』は、温度、湿度、電力、CO2濃度、振動など多種多様な無線センサを取り揃えているため、流量をはじめとした環境情報を一元的に収集することができます。計測データは無線で送信されるので、流量計の設置数が多かったり、高所や暗所など危険な場所に設置されていたりしても、現場巡回の必要はありません。安全性の向上や業務効率化、ヒューマンエラーの防止、労働人口減少への対策としても、メリットが大きいのではないかと考えています」(鷲尾)

(※):ミスター省エネはセイコーインスツル株式会社の登録商標です。

限りある資源の無駄遣いを防ぐ

 

現在UC-1は、工場やビルなど様々な場所で活用されている。導入の手軽さから、これまで流量計測を行ったことがなかった場所でも、UC-1の設置が広がっているそうだ。

 

 

「お客様の導入理由として最も多いのは、やはり『水の流量を可視化して使用量削減につなげたい』というニーズです。また、『配管の老朽化による漏水リスクに備えたい』と、導入いただくケースもあります。UC-1を利用して枝管の流量までモニタリングできれば、たとえ漏水が発生しても該当箇所をすぐに特定でき、早期に対策を講じやすくなるでしょう。その他、学校などからもUC-1導入に関するお問い合わせをいただいています。プールの水を止め忘れて大量の水が無駄になってしまったニュースを耳にすることがありますが、UC-1で流量を可視化すれば、そのような事故防止にも役立つのではないでしょうか」(鷲尾)

 

「流量計に初めて触れる方でも簡単・手軽に設置ができるように、UI(ユーザーインターフェース)にもこだわりました。設定も、画面の案内に従って直感的な操作が可能です。もし流れの方向と逆に取り付けてしまった場合でも、流量計を取り外すことなく画面操作だけで簡単に変更できます」(菅家)

 

 

UC-1の出荷時には、スタートアップガイドが1枚同梱されているのみだ。にもかかわらず、「販売開始以来、設置や操作に関するお問い合わせ件数は予想よりも大幅に少なく抑えられている。」(菅家)という。これも、「誰もが使いやすく」というユーザビリティを考慮した結果だろう。詳細な取扱説明書を必要としないことで、紙資源の使用量削減にもつながっている。

埋もれていた環境情報を丸ごと見える化

 

UC-1で計測されている流体は、主に水や温水だ。さらに、他の流体に関しても「UC-1で使用状況を可視化したい」という期待の声が多く寄せられているという。

 

「例えば化学薬品や燃料油の計測要望を多くいただいています。UC-1は電池式で可搬性が良いため、電源工事を伴う流量計の増設が難しい場所でのフィールドテストもチャレンジしやすい製品です。知見を増やし、今後、適用流体の幅が広がれば、UC-1の担う役割はもっと大きいものになると思います。お客様のニーズをヒアリングし、対応可能な配管口径の種類なども増やしていきたいですね。

無線通信機能を備えたUC-1は、計測した流量情報や電池寿命情報などを専用の無線親機に送信することができます。無線親機については、受信した流量情報等をその場で表示するパネルマウント形の積算計(EL9240)や手軽にパソコンで流量をモニターできるUSBタイプの親機など「スモールスタート」に特化したものから、一般的なPLCやDCSなどと連携できるゲートウェイ機能を有した親機など、お客様のご要望に応じて最適なものをご提案できるものとなっています。場所を選ばず、エネルギーの使用状況が一目瞭然なので、管理部門だけでなく、現場レベルでも自然と省エネを意識するきっかけになるでしょう。流量のきめ細かい可視化を通して、持続可能な社会の実現に貢献できればと願っています」(菅家)

 

 

「このUC-1は、東京計器株式会社様、セイコーインスツル株式会社様との協業によって生まれました。互いの強みを活かし合う相乗効果で、ユーティリティ流量計測の課題を解消する革新的な流量計を開発できたと自負しています。

UC-1を活用すれば、流量のみならず、これまで埋もれていた様々なデータを効率よく収集できます。工場やビル、商業施設など、あらゆる現場の環境情報を丸ごと見える化し、省エネ・脱炭素化を推進する起爆剤となることを期待しています」(鷲尾)

 

 

 

(ライターメモ)

循環経済(サーキュラーエコノミー/ Circular Economy)に向けた取り組みが加速する中、水マネジメントの重要性はますます高まっている。限りある水資源を有効活用し、環境負荷を低減するには、流量のきめ細かな可視化が不可欠だ。“完全工事レス”をコンセプトに開発された流量計「UC-1」は、従来の流量計測の課題を解消し、測りきれていなかった資源の可視化を実現する。産業界における水マネジメントを力強く後押しするツールとなるだろう。

 

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UC-1

 

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