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TOPICS
2024年06月21日
サステナビリティインタビュー
(写真左から)鷲尾、重田、瀧沢、神崎
産業界のあらゆる分野において、欠かせない存在である流量計。座談会【前編】では、その多彩な魅力や流量計にかかわる仕事の醍醐味について、担当領域の異なる4人のキーパーソンたちに語ってもらった。
省エネやサステナビリティが必要とされる今、流量計が提供する価値とはどんなものなのだろうか。【後編】では、流量計専業メーカーとして考える課題を踏まえ、未来に向けた流量計の可能性を探る。
(出席者プロフィール)
・鷲尾 健二
研究開発部部長
電気計器(計測数値の変換器)の開発を担い、顧客ニーズを製品化。好きな流量計は「オーバルギア式流量計(=容積流量計)」
・神崎 秀輝
サービス部サービス技術センタ課長
設置先への出張メンテナンスを担当。好きな流量計は「渦流量計」
・重田 明日香
技術部仕様管理グループ係長
顧客からの注文を製作仕様書に落とし込み製造現場に指示を出す司令塔。好きな流量計は「渦流量計」
・瀧沢 脩
技術部技術二グループ係長
製品に関する顧客からの問い合わせや改良要請などに対応。好きな流量計は「コリオリ流量計」
鷲尾:流量計に限らず、計測・計量は、人が文化的な生活を送る上で欠かせないものです。もし流量計がなければ、飲料や加工食品の味を安定的に維持することはできないでしょう。また、石油やガスなどのエネルギー流体をはじめとした気体や液体を売買する際、計測するメーターがいい加減だったら、公正な取引は成り立ちません。流量計は、産業のあらゆるシーンで“正しさ”を担保し、社会のインフラを支える計測器だと思います。
重田:製造や取引における計測に加えて、消費量を測ることも、流量計の重要な役割のひとつです。例えば、燃焼設備などでガス排出量の削減を掲げても、消費量を正しく計測できなければ、排気ガスが本当に減っているかどうかはわかりません。現状を把握し、次のステップにつなげるためには、消費量の計測が不可欠です。環境への配慮や省エネ、脱炭素社会の実現を目指す上でも、流量計の果たす役割は非常に大きいと感じています。
神崎:環境問題への取り組みという面では、消費量・廃棄量を正確に知る次のステップとして、「生産時にどのような改善ができるか」を検討していく必要があります。その際にも、流量計の正確性はとても重要な意味を持つでしょう。また、流量計は、お客様の製造品質や安全性、さらには製品価格や税金などにも関わってきます。「産業界のマザーツール」と呼ばれるとおり、まさに産業の根底を支える重要なツールですね。
瀧沢:言いたいことは全部皆さんが話してくれました(笑)。総じて考えると、社会にとっての流量計の価値とは、やはりインフラのひとつであることではないでしょうか。人間が生きるには、水を飲んだり、食べ物を食べたり、トイレを使ったりしなければなりません。どれだけ技術が進歩しても、生命活動を営むために必要なものは、変わらず存在し続けます。流量計が必要とされるのは、まさにそういった生命活動に関わる場面。これからも、「根源的なインフラを維持する」という社会的な価値を提供し続けるはずです。
瀧沢:先ほどお話しした「インフラの維持」を日常業務に落とし込むと、「工場の稼働を止めない」「安定した流量計の生産体制を維持する」ということになります。世界情勢が不安定な中でも、例えば部品が入手できないからと流量計の製造が止まってしまったら、将来的なインフラ機能の停止につながってしまいます。品質と安全性を確保した上で、安定して製品を供給する重要性を、常に意識しています。
神崎:苦労するのは、設置後に不具合が起こり、その原因がなかなかわからないときですね。一口に「うまく測れない」と言っても、機器の故障なのか、経年劣化なのか、設置の仕方や使用方法に誤りがあるのか、不具合の原因はさまざまです。想定される原因を一つひとつ検討し、改善のため力を尽くしますが、それでも解決に至らないこともあります。コストとの兼ね合いもありますし、お客様としても待ったなしの状況ですから、そういうときは非常に苦労しますね。
重田:個人的に課題だと感じているのは、製品の標準化に関する部分でしょうか。当社では、標準製品のほかに特殊仕様の流量計にも対応していますが、その中には、お客様からのご要望が比較的多い特殊仕様品もあります。特殊仕様の製品は、製作仕様書の作成に時間がかかる分、標準製品に比べて製造の開始が遅れてしまいます。お客様のニーズが多い仕様に関しては「標準製品になればもっとスムーズに対応できるのに」と思う一方、標準化するには事前準備に多大な労力がかかります。どこまでを標準とし、どこからを特殊として扱うか、良いバランスが見つかれば理想的です。
鷲尾:解決したいと考えている課題は2つあります。1つ目は製品の開発において、より高いレベルを目指すこと。研究開発はものづくりの出発点ですから、ここで良いものを作らないと、当然良い製品はできません。同時に、特殊なニーズへの対応や設置後のメンテナンス、お客様への説明のしやすさなどにも十分配慮した設計が求められます。製品の完成度を高めるためには、実際にお客様と接しているスタッフの言葉を聞き、それを設計にフィードバックすることが大切です。これは私たちにとって終わりのない課題ですね。 2つ目は、「お客様が求めているものを、いかに的確に把握するか」ということです。お客様は流量計そのものが欲しいわけではなく、何らかの目的を実現するための道具として流量計を必要としているはずです。中には、お客様ご自身も気付いていない、潜在的な問題が存在するかもしれません。営業スタッフに同行するなどしてできるだけお客様を訪問し、そういった潜在ニーズを引き出していきたいですね。お客様のお困りごとに対して適切なご提案ができるように、普段からアイディアをたくさんストックしています。
瀧沢:テクノロジーが進歩して生活が豊かになっても、私たちが生きていくために必要なことは変わりません。どれだけ時代が進んでも、コアとなる技術に大きな変化はないと思います。流量計が支えるインフラ機能もそのひとつです。ただ、今後、少子高齢化によって人材が不足し、インフラを維持するノウハウが失われていってしまう可能性があります。そんな中で、流量計専業メーカーとして長い歴史を持つオーバルの役割は、ますます大きくなっていくのではないでしょうか。現在、ほとんどの産業設備には流量計が使われています。これからも高品質かつ高精度な流量計を提供し続けるとともに、培ってきたノウハウと技術をフル活用してお客様のニーズに応え、インフラの維持へ貢献していきたいと思います。
重田:私たちの部署で常に心掛けているのが、業務の効率化です。会社がどれだけ社会に貢献していても、社員が無理な働き方をしていては、持続可能性は低下してしまうでしょう。会社としての取り組みを長く継続するには、ワークライフバランス向上が重要なポイントになります。社内でも、制度の整備を含め、男女問わず安心して働きやすい環境づくりが進められています。
鷲尾:先ほど話題にあがったコリオリ流量計とは逆に、メンテナンスさえ行えば長く使用できるオーバルギア式流量計も、持続可能性と非常に親和性が高い流量計だと思います。点検で返却されるオーバルギア式流量計の中には、私が生まれる前に製造されたものもあるほどです。ほぼメンテナンスフリーのコリオリ流量計も、定期的にメンテナンスをすれば非常に長く使えるオーバルギア式流量計も、どちらもサステナビリティの実現につながるのではないでしょうか。 さらに、お客様の省エネ対策の課題を解決するため、現在、“完全工事レス”の「無線対応クランプオン式超音波流量計」を開発中です。これは、東京計器株式会社様と共同開発している流量計で、配管工事不要、配線工事不要、電源不要、ドライバー等の工具も不要という特長があります。セイコーインスツル株式会社様が提供する無線センサネットワーク「ミスター省エネ」に対応しており、これにより配線工事をすることなく無線による遠隔での流量管理が可能となっています。また、内蔵電池により外部電源不要で長期間の稼働(約10年間を予定)が可能です。流量計を設置するには、一般的に、配管や電源、ケーブルなどの工事が必要になるため、「省エネ対策のために設置を検討しつつもコスト的な面から実現できない」というケースが多々ありました。しかし、この新しい流量計であれば、工事が難しい場所や電源のない場所でも簡単に後付けが可能で、すぐに使用開始できます。「ミスター省エネ」は温度、湿度、電力、CO2濃度、振動などの様々な無線センサをラインアップしていますが、この新型クランプオン式超音波流量計が加わることで、より一層お客様の省エネ活動に貢献できるものと期待しています。今後も幅広いお客様の流量計測のニーズに応え、新たな価値を提供していきたいと思います。
(ライターメモ)
流量計の役割は、ただ「測る」という作業にとどまらず、産業のインフラを下支えし、維持することだ。オーバルが目指す付加価値の創出は、顧客のニーズに応えるのみならず、顧客の省エネ活動を通して、気候変動緩和への貢献につながるだろう。開発中の「無線対応クランプオン式超音波流量計」は、2024年秋にリリース予定だ。新たなソリューションによって、流量計の可能性がさらに大きく広がっていく。