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気候変動から「冬」を守るために
-クロスカントリースキーヤー宮崎日香里選手に聞く-

2024年08月20日

サステナビリティインタビュー

オーバルでは、環境問題を企業の社会的責任と捉えており、気候変動の影響を大きくに大きな影響を受けるウィンタースポーツなどを通して、直接的・間接的に持続可能な社会の実現を目指している。そのオーバルがパートナーシップを組むアスリートが、ミラノ/コルティナ五輪でのクロスカントリースキー日本人初のメダルを目指して活動するクロスカントリースキーヤー、宮崎日香里選手だ。 2023/24シーズンに欧州を中心に転戦を重ねてきた宮崎選手は、競技活動の中で、気候変動の影響や、日本と海外の環境問題への取り組みの違いを体感することが多かったという。「冬」を守るために、私たちができることとは何だろうか。宮崎選手と荒井章吾コーチにお話を伺った。

 

気候変動がクロスカントリースキーに与える深刻な影響

 

クロスカントリースキーは、雪に覆われた地域を移動するために生まれた、スキーの原点ともいえる競技だ。脚や腕を使ってアップダウンのあるコースを滑りぬくことから、「雪上のマラソン」とも呼ばれる。当然のことながら、レースを行うには雪が必要不可欠だ。 しかし近年、地球温暖化をはじめとする気候変動が、雪と競技に影響を及ぼしているという。1年の半分をスウェーデン、もう半分を出身地でもある長野県を拠点に活動している宮崎選手は、「日本でもスウェーデンでも、雪の降る量が少なくなっているように感じます」と語る。

 

 

「以前は自然の雪でレースができていた場所でも、降雪量が足りず、人工雪が使われるケースが増えています。日本でも、私が子どもの頃に比べて、雪の降り始めが遅く、溶けるのが早い気がします。 天然雪と人工雪では、スキー板の選び方やワックスのかけ方なども変わってきますし、気温が高くて雪が溶けると滑りにも影響が出ます。例えば、ぬかるみよりアスファルトの方が走りやすいように、クロスカントリースキーも、溶けかけた雪より、気温が低く雪面の硬い方がスピードは出やすくなります。特に、天然雪と人工雪が混ざり合っているような場合は、雪の状況を判断しながらレース展開を考えなければいけないので大変です。」(宮崎選手)

 

宮崎選手と共にスウェーデンと日本を行き来した荒井コーチも、雪不足によって、レースの開催方法形態まで変更になるケースを見聞きするそうだ。

 

 

「特に国内大会では、雪不足のために、従来どおりのコースを設営できない場合が少なくありません。例えば10kmのレースで、本当なら5kmのコースを2周するはずが、雪が足りずに2kmのコースしか作れず、そこを5周するようなこともありました。クロスカントリースキーの面白さは、自然の雪や気温、斜面の変化の中、いかに速く進めるか、というところにあります。短いコースをぐるぐると回るだけでは、レース戦略もシンプルになってしまいますし、見てくださる方にもクロスカントリースキーの本来の魅力が伝わりづらくなってしまうかもしれません」(荒井コーチ)

環境先進国スウェーデンで実感した、日常に根付く環境保全活動

 

スウェーデンをはじめとする北欧諸国は、気候変動問題に積極的に取り組み、「環境先進国」とも呼ばれている。年の半分をスウェーデンで過ごした宮崎選手も、現地の人々の生活に、環境保護への意識が根付いていることに驚かされたそうだ。そのひとつが、ペットボトルやアルミ缶のリサイクルを推進するために実施されている「パント」というシステムだ。

パントシステムは、ペットボトルや空き缶のデポジットのようなものだ。ペットボトルや缶の飲料のパッケージにはパントマークが表示されており、購入者は商品価格にパント分(日本円で20~30円程度)を上乗せして支払う。中身を飲み終えたペットボトルや空き缶を回収機に入れると、パント分がレシートで出てきて還元され、現金の代わりに買い物やまた寄付にも使用できる仕組みだ。回収機はほとんどの身近なスーパーに設置されており、国内で購入したものなら、どの回収機でも利用対応可能だという。

 

 

「パントシステムが浸透しているので、スウェーデンでは、街中でペットボトルなどが捨てられているのを見ることはほとんどありません。パントを捨てるということは、お金を捨てるのと同じことですから。販売の段階から、回収とリサイクルの仕組みが作られているのはすごいと思いました」(宮崎選手)

 

また、スウェーデンでは、森林保護に対する取り組みも重視されているという。寒さの厳しいスウェーデンでは、暖房に薪を使うことが多い。しかし、伐採と植林を適切なバランスで行うことによって、森林資源の持続性を高めていると宮崎選手は語る。

 

「森を育てるためには、密集した木々の一部を伐採し、太陽の光が当たるようにしなければなりません。その間伐した木材を薪として使用し、木を切ったあとには新しく苗木を植える。そうやって、森林をうまく循環させているように感じました」(宮崎選手)

 

「スウェーデンでは電気自動車も多いですね。充電スタンドも、スーパーや公園などいろいろなところにあるので、長距離の移動でも問題なく使用できます。さらに、レンタカーでも自家用車でも、ガソリン車よりも電気自動車の方が、利用しやすくリーズナブル。まずは設備面など環境を整えることが、環境保護への近道なのかもしれません」(荒井コーチ)

一人ひとりの小さな行動が、「冬」を守る大きな力になる

 

近年、日本でも、気候変動の緩和や環境保護対策として、さまざまな取り組みが行われている。宮崎選手も、「買い物の際にできるだけレジ袋をもらわない」「ゴミを正しく分別する」など、日常の中でできることを徹底するよう心掛けているそうだ。

 

「一つひとつは小さなことでも、同じように考える人が増えれば、きっと大きな力に変わっていくはずです。私にできることは限られていますが、環境問題に取り組んでいるオーバルさんと一緒に情報を発信していくことはできます。その発信によって、一人でも多くの人が『自分も気をつけよう』と思ってくれたら、その積み重ねが環境問題の改善につながると信じています」(宮崎選手)

 

小さな積み重ねが大きな力になる。それは、競技活動における日々の練習でも同じだと荒井コーチは言う。

 

 

「大会で良い結果を出すために一番大切なのは、日常生活の中での意識だと思っています。日常生活の中でできないことは、スキー板を履いてもできません。気候変動への取り組みもそれと同じ。一人の意識、一人の行動を変えることが、環境問題解決に向けた第一歩ではないでしょうか」(荒井コーチ)

 

アスリートとしての今後の目標を宮崎選手に尋ねると、「2026年のミラノ/コルチィナオリンピックで一番良い色のメダルを取ること」という力強い答えが返ってきた。世界の頂点を目指し、現在は、荒井コーチと二人三脚でトレーニングに励んでいる。

 

「オリンピックでメダルを獲得できれば、注目度も高まり、多くの人へ環境問題について発信することが可能になります。その時に、より効果的な発信ができるように、オーバルさんもSDGs達成への第一線を走り続けていてほしい。共に高みを目指し、気候変動に対する活動を広く伝えることで、一緒に『冬』を守っていきたいと思います」(宮崎選手)

(ライターメモ)

宮崎選手は、帰国時にはオーバル社内で講演会を行うなど、競技生活の中で感じる気候変動の影響や海外の取り組みについて、体験を交えながら伝えてくれている。オーバルは、世界の頂点を目指す宮崎選手を応援し、持続可能な発展に貢献し続けていく。

 

 

 

 

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